遊戯空間公演
2015年12月8日(火)~10日(木)
浅草木馬亭
作:竹田出雲
三好松洛
並木千柳
構成・演出:篠本賢一
~大序から討入まで一気に語り尽くす渾身の舞台~
出演:佐々木梅治(劇団民藝)
をはり万造
山谷勝巳
池田ヒトシ
坂詰貴之
篠本賢一
加藤亮佑
丸本育寿
草野峻平(劇団朋友)
川邊史也(劇団銅鑼)
観世葉子
神保麻奈
秦由香里
花村さやか
鳴物:若月宜宏
設楽瞬山
照明:青木慶太
写真:宮内勝
ビデオ撮影:大塚登(東京舞台映像)
制作協力:高橋俊也
(THETRE-THEATER)
人形浄瑠璃、歌舞伎の名作『仮名手本忠臣蔵』を全段通しで上演するこの企画をはじめて今年で四年目となりました。昨年まではタイトルに「リーディング」という文字を入れていましたが、今年はそれをあえて外しました。私たちの上演は、ご覧のとおり、台本を携え、服装は黒の上下に白足袋で、化粧もしませんし、演技に歌舞伎のような所作や型、文楽の太夫のような節回しもありません。ひたすら、原作の言葉から、いかにドラマを浮かび上がらせることができるかということに集中します。これは、「リーディング」という名の作品紹介ではなく、れっきとした「ことばによるドラマ」であり、古典芸能と現代劇を繋ぐ大切な仕事だと信じています。毎年、何らかの工夫を盛り込みながら、上演を重ねてきましたが、今年は、昨年からご参加頂いている鳴物の若月宣宏さんに加え、設楽瞬山さんにもご参加頂き、鳴物に厚みが増したことも見どころのひとつでしょう。俳優陣は初参加の面々が、連続出演のメンバーにいい刺激を与え、アンサンブルの充実を図ることができました。ところで、よくお客様に「忠臣蔵」なのに「大石内蔵助」が出てこなかった、刃傷の場面が江戸城でなく鎌倉だった、討ち入りに船で来たなどのご質問を頂きますが、当時、武家社会を批判するような作品は幕府に取り締まられていましたから、作者は時代や設定を変えていました。元禄赤穂事件も武家社会のスキャンダルともいえる事件なので、「大石」が「大星」になり、「太平記」の人物を借りて「浅野」が「塩谷」に、「吉良」が「高」に変わっています。ですが、当時の観客には、それが誰をモデルにしているか、容易に想像がついたわけです。天保年間、幕府の風紀の取締りから、中村座、市村座、河原崎座など、主要な歌舞伎小屋がここ浅草に移転させられました。はじめは江戸の外れのこの場所にお客の足は遠のきましたが、やがて、かつての賑わいを取り戻し、幕末の頃、黙阿弥の白波ものなどを楽しんだようです。
そんな歌舞伎のゆかりの地で、私たちの『仮名手本忠臣蔵』をお楽しみ頂けたら幸いです。
篠本賢一(パンフレットより)