遊戯空間vol.3
1990年4月27日~30日
江古田ストアハウス
構成・演出:篠本賢一
出演:齋藤緑
山本薫
橋本修一
彩野多絵
百目鬼幸代
水野資子
岸一成
内田光
笠原秀晃
美術:斉藤宏司
照明:倉本泰史(ライティング・ライン)
音楽:川中美樹
音響:小玉真
制作:遊戯空間
MEMO
都会に生きる人々の妊娠をめぐるオムニバス。妊婦の苦労を体験しようとする夫、子供を望まない夫に悩む妻、仕事で不在が多い夫を明るく迎える妻、子供を産めない体と診断されたシングルのOL、妻子ある男性の子を身ごもった女、妻との生活に嫌気がさしゲイになった男など、多彩な人物が登場する。彼らは劇中、コンタクトをとることはない。都会の孤立した部屋々々をのぞき見するかのような形で劇は進行する。妊娠の段階に応じた4曲の妊娠ソングが挿入される。演技はアウトラインだけを決めて本番も即興で行った。必ずしも成功だったとは言い難い部分もあるが、演技というものを多層的に展開することに挑戦できたと思う。チャプターごとにキャラクターを離れた役者自身のダンスシーンも挿入した。舞台装置はリアルな室内を再現し、舞台と観客席を地続きにすることで臨場感を出した。振り返れば『オルフェオB`』からこの『未来の王国』までの作品に共通する問題は俳優が役を演じることへの懐疑かもしれない。いずれの作品も俳優が役から逸脱し、素の俳優自身となる場面が挿入されている。それは仮面を使わない仮面劇と言い換えることができるかもしれない。この年、篠本は観世榮夫と出会うことになる。それは必然だったのかもしれない。